蛇神はたくらみ龍神は斬る」(11)東の龍と西の虎Ⅲ

カテゴリー/ その他 |投稿者/ カウンセリングルーム「桜」
2018年12月02日

 

東の龍と西の虎Ⅲ

 もう一つ気がついたことがある。長女にとって私は、ライバルにはなり得ない、気が置けない存在として、いつも面白いことをいって笑い合える癒しの存在なのだと自分では自負していた。

 だが本当にそうだろうか?

 確かにそういう面もあった。子どものときから姉妹で集まってバカ話をして大笑いすることがあった。そういうとき、私は張り切って姉達を笑わすのだった。話がツボに入ると長女も涙を流して笑い転げたものだ。私は姉妹で持てるこういう時間が大好きだった。

 だが、それは長女の一面でしかなかった。最近子どもの頃の長女のことを母に尋ねたとき、「あの子は子どものときからしっかりした、きつい子だった。」と言っていた。確かに長女はとてもしっかりしていた。仕事の役割分担はいつも長女が決め、指揮をとって姉妹にやらせていた。私にとっては煙たい部分も多かったはずだ。私が高校生の頃には「この子は家から出さんといけんよ。」と盛んに両親に進言していたのを覚えている。それは、依存的でいつまでたっても自分の進路を自分で考えようといない私を心配しての言葉だったはずだ。だが、当時の、いつまでも両親の庇護のもとに依存し続けたいわたしには、それが愛のある言葉には聞こえなかったはずだ。私の中にも姉をきついと思う気持ちがあったはずなのに、自覚できないのはなぜだろうか?

 姉が嫁いだ先は大きな和裁学校だったが、嫁いでからも益々好調に業績を伸ばし、学校を建て替え、規模を大きくしていた。若くして夫を亡くしたお姑さんが一人で大きくされた学校で、育てられた4人のお子さまも外交官から京都の和服問屋や大学教授の奥様など、立派な方々ばかりだった。

 姉は厳しいお姑さんの指導を受け、大変そうだった。泣きながら実家で母と話している姿も見ていた私は、姉に呼ばれて預金集めに行くたびに面白い話をして、姉の笑う姿を見て、私なりに姉の役に立っているつもりでいた。だが、姉にとっては、むしろそんな大変な状態にあっても私のことが心配だったのだ。銀行のノルマをちょっとでも助けてやろうと絶えず気に掛けてくれていたのだった。そんな姉の視点が当時の私の中にはなく、姉の大きな愛に気づけなかった。

 父に勧められ、あまり気乗りではなかったが決めた結婚、厳しいお姑さんの指導、中々出来ない子ども、上手くいっていないらしい夫婦の仲。

 実際に姉の気持ちを聞いたわけでもないのに、自分で勝手に姉の気持ちを想像し、姉の人生を悲劇と決めつけて見ていなかったか?

 努力が好きで、自分の能力で人の役に立つことが何よりも生き甲斐だという人にとっては、姉の人生はやりがいがある毎日だと感じるかもしれない。だが、仕事嫌いで、努力が嫌い、空想の世界で遊ぶのが一番楽しいと感じている私には、当時の姉の人生から喜びを見出すことが出来なかったのだった。

 人は自分の脳を通してしか何も認識できない。姉の悲劇のような人生をつくったのは私の脳なのだ。それは自分の中にパターンとして存在する。もし自分が長女のような立場を選んだら、私は姉と同じように若死にするだろう。だから、絶対に頑張り過ぎない道を選ぶ。そのパターンをつくったのは子どもの自分だ。祖父の死に接して、「頑張り過ぎたら病気になって死んでしまう。」と意味付けたのだ。

 

 これも自分への呪いだった。脳には主語がないとフラクタル心理学ではいう。つまり、私が見ている現実では、だれであっても頑張り過ぎたら死んでしまうというパターンに当てはめられる。これは、元々は頑張らない自分への言い訳として意味付けたのだが、その後の人生を法律のように支配する。実際、そういう現実を姉以外にも度々見ることになるのだった。

 この呪いを解くには、仕事を好きになる必要があった。コツコツと努力することを好きになり、本物の能力をつけて、その能力で人の役に立つ喜びや達成感を知ることが、呪いを解く一番の近道なのだ。だが、そう聞いたとしても、仕事嫌いの人間には、それこそが一番遠い道のりに思えるだろう。感情の抵抗には敵わないことを散々身を持って知っているからだ。一度子どもの頃についてしまった思考パターンを変えることはそれくらい難しい。

 

 ずっと自由に夢ばかりみていたい、なんの責任も負いたくない。自分で努力しなくては夢を現実のものには出来ないとわかっていても、どうしてもやる気になれない甘えた自分自身を愛することが出来なくなっていた当時の私に、生長の家という宗教が救いの道を示してくれたのだった。(続く)

 

イチョウの御神木

 

 

 

カウンセリングルーム「桜」
広島県福山市松永町4-32-7
TEL:090-4691-9173

Copyright © 2019 monkey-tamako,all Rights Reserved.

Top